【Ken’s Denpa Lab】#01 tvkのテレビ電波はどこから来ているのか?(その1)

こんにちは!

このシリーズでは、テレビ放送に欠かせない電波の話をします。

と言っても、電磁気学の話を始めてマクスウェルの方程式などを持ち出し、大学の専門課程の授業のようにしたいわけではありません。
なるべく分かりやすく、時にはゆるく、書いていくつもりでいます。

どうぞ、気軽にお付き合いください。

初回は、やはり

tvkのテレビ放送で一番重要な施設の話から始めることにしましょう。

皆さん、こんな形のアンテナがあって、これがテレビ電波を受信するものであることはご存知と思います。

ご自宅の屋根に付いている、という方もいらっしゃるでしょう。

当然のことながら、その電波は地面から湧き出しているわけではなく、発射している施設がどこかにあるわけです。

いま最も有名なのは、何と言っても、東京スカイツリーでしょう。

この建造物は、展望台があるだけでなく、電波を送信するための重要な施設なのです。

高さ634mの塔の上から、関東平野の広い範囲に電波を送ることができます。

NHKをはじめ、東京民放局のテレビ電波やFM放送の電波がここから出ています。

しかし、tvkのテレビ電波はスカイツリーからは出ていません。

横浜市鶴見区や川崎市幸区の辺りに行くと、写真のような赤と白に塗られた鉄塔が見えることがあります。

スカイツリーよりはかなり背が低いですが、それでも150mあり、周辺ではかなり目立つ建造物です。

この塔が、鶴見送信所と呼ばれる、tvkの電波の根幹を担っている送信設備です。

1972年の開局当初(当時はアナログテレビ)から、この鶴見で電波の送信を行なっています。

なぜ、わざわざ本社から離れた場所に、こんな高い塔を建てる必要があるのか?

テレビの電波として使われているのはUHF (Ultra High Frequency) と呼ばれる周波数帯のもので、建物や地形に遮られやすい性質があります。

ごくごく大まかに言うと、目で見える所までしか届きません。

さて、皆さんが遠くの方まで景色が見たいと思った時、どうしますか?

そうです、高い所に登ります。

それと同じ理屈で、高い所から発射した方が、より広い範囲に電波を届けることができるのです。

(鶴見送信所鉄塔の上から横浜港方面の景色。地面に近い所では、ここまで遠くは見えません)

高い建物を建てるには、それなりに広い敷地を必要とします。

建築に当たって、最適地を探した結果が、この鶴見の地だったのだと想像します。当時は、周りに家も少なかったとのことです。

鉄塔のどこに送信するアンテナがついているかと言うと、一番てっぺんのこの箇所になります。細長い箱のようなものが縦に3つ並んで、それが4方向に取り付けられています。

これらの箱の一つ一つが送信アンテナです(箱を開けると中にアンテナの本体が入っているのですが、その写真を用意することができませんでした。
興味のある方は「双ループアンテナ」で検索してみてください)

地上からは小さく見えますが、箱は2m以上の高さがあります。

鶴見送信所(丸印の位置)から発射されたtvkの電波は、概ね、この地図で薄いオレンジ色に塗った範囲に届いているとみられます。電波に県境は見えないので、隣の東京都や海を越えた千葉県の方まで飛んで行きます。

ここで、「神奈川県内なのに電波が届いていない場所があるではないか!」と気付いた方は鋭い。

テレビの電波は、先に書いたように建物や地形などの障害物に邪魔されやすいのに加え、空気中を伝わっているうちに弱くなってしまう性質もあります。

つまり、あまり離れている所では安定して受信することができません。

鶴見送信所からの電波だけでは、残念ながら、神奈川県を全てカバーすることができないのです。

その空白地帯にどうやって電波を届けているのかは、また別の機会に譲りましょう。

少し専門的な話も。

アナログテレビの時代をご存知の方は、tvkの放送を見るのに“42ch”というチャンネルに合わせていたことをご記憶かもしれません。

今のデジタルテレビでは“3”のボタンを押すとtvkが映りますが、実は、鶴見送信所の電波には“18ch”というチャンネルが割り当てられています。

本当は18なのだけれども、視聴者の皆さんが覚えやすいように、3を押せば映るような仕掛けがしてあるわけです。

デジタル時代ならではの仕組みです。

さて、鶴見送信所の住所は「横浜市鶴見区三ッ池公園」という地名です。

その名の通り、神奈川県立三ッ池公園(みついけこうえん)が、鉄塔の根元付近に広がっています。

鉄道駅から少々距離があるため、地元の人以外はなかなか訪ねられないと思いますが、四季を通じて散策が楽しめる公園です。

園内にはかなり起伏があり、歩くとちょっとしたハイキング気分も味わえます。

運が良ければ、色々な野鳥に出会える場所でもあります。

天気の良い休みの日に、ふらりと出掛けてみるのはいかがでしょうか。

鶴見駅からバスも出ています。

目次